出願後に、出願書類の内容を変更することをいう。補正は、手続補正書を提出することで行われる。補正には遡及効があり、補正後の内容は出願時にされたものとみなされる。
例えば特許では、明細書、特許請求の範囲、または図面の補正は、出願当初の明細書、特許請求の範囲、又は図面に記載された事項の範囲内でしなければならない。
特許法
特許補正
特許出願において、出願人は、事件が特許庁に係属している場合に限り、補正をすることができる。しかし、明細書、特許請求の範囲、図面等の書面については、特許法第17条の2~5に補正要件が規定されており、第17条の2第1項第1号~第4号には時期的要件が、第17条の2第3項~第5項には実体的要件が規定されている。補正における制約があることにより、審査の長期化を防ぎ、権利範囲における出願人と第三者の公平さを確保することに寄与している。また、行った手続きが規定に違反している場合には、特許庁長官は出願人へ補正を命じることもできる(特許法第17条第3項)。適法な補正は出願日に遡及し、補正後の内容で手続きが行われたものとみなされる。
【補正の要件】
- 新規事項追加の禁止
新たな技術的事項を導入するものである場合には、新規事項を追加する補正であると判断される。出願当初の明細書に記載された事項の範囲内で補正を行わなければならない。新規事項を追加するか否かは、新たな技術的事項を導入するものであるか否かが判断基準とされている。
- シフト補正の禁止(出願日が平成19年4月1日以降の出願の場合が対象)
発明の特別な技術的特徴を変更する補正でないこと。
- 目的外補正の制限
最後の拒絶理由に対する応答及び拒絶査定不服審判と同時の補正において、特許請求の範囲の減縮、請求項の削除、誤記の訂正、又は明瞭でない記載の釈明を目的とする補正以外の補正を却下する。要するに、最後の拒絶理由通知に対する応答のとき、拒絶査定不服審判と同時にする補正には、当該補正の目的が必要となる。
【時期的要件と補正範囲の経過】
〇出願
↓
出
願
審
査
請
求
↓
・特許請求の範囲、明細書、図面について補正可能。
・要約書の補正は出願から1年4か月以内。但し、出願公開の請求後は補正できない。
(出願審査請求は出願から3年以内(特許法第48条の3)。)
〇第一回目の拒絶理由通知(最初の拒絶理由通知)
・意見書提出期間に特許請求の範囲、明細書、図面について補正可能。
・拒絶理由通知発送日の翌日から起算した60日の期間が指定期間。
↓
(先行技術文献の開示が不十分であるとの通知があった場合の指定期間も補正可能(同法第48条の7)。)
↓
〇第二回目以降の拒絶理由通知(最初の拒絶理由通知)
〇最後の拒絶理由通知
〇拒絶査定
・最初の拒絶理由通知の場合
意見書提出期間に特許請求の範囲、明細書、図面について補正可能。
拒絶理由通知発送日の翌日から起算した60日の期間が指定期間。
・最後の拒絶理由通知の場合(補正により通知が必要となった拒絶理由に対して出る通知)
意見書提出期間に特許請求の範囲、明細書、図面について補正可能。但し、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記訂正、明瞭でない記載の釈明のいずれかを目的とする補正であることが必要。
拒絶理由通知発送日の翌日から起算した60日の期間が指定期間。
・拒絶査定の場合
拒絶査定不服審判請求と同時に、特許請求の範囲、明細書、図面について補正可能。但し、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記訂正、明瞭でない記載の釈明のいずれかを目的とする補正であることが必要。
拒絶査定謄本の送達があった日から3か月が法定期間(同法第121条)。
↓
↓
〇特許査定
意匠法
意匠補正
意匠出願において、出願人は、事件が審査、審判又は再審に継続している場合に限り、願書に添付した図面を補正することができる(意匠法第60条の24)。
意匠出願における補正は、出願時の意匠の要旨を変更しない補正のみ許容され、要旨を変更する補正に該当すると補正却下の決定が下される(同法第17条の2)。「要旨変更の詳細について」
商標法
商標補正
商標出願において、出願人は、事件が審査、登録の異議申立てについての審理、審判又は再審に継続している場合に限り、願書に添付した図面を補正することができる(商標法第68条の40)。
また意匠出願と同様に、商標出願時における指定商品・役務又は登録を受けようとする商標の要旨を変更する補正はできず、その場合補正却下の決定が下される(同法第16条の2)。「要旨変更の詳細について」
但し、出願時の願書に記載した指定商品又は指定役務、商標登録を受けようとする商標の要旨を変更する補正をしたものの登録がなされた場合には、登録後であっても、その補正を行った手続補正書の提出日が出願日としてみなされる(同法第9条の4)。
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