知財用語集GLOSSARY

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冒認出願

  • 商標法
  • 意匠法
  • 実用新案法
  • 特許法

 特許・意匠・実用新案において、第三者が他人の発明等を盗み、その発明等で出願を行うことを冒認出願という。現在では、「冒認」という文言は、昭和34年の法改正により条文上は使われなくなった。冒認出願は、正当な権原を有しない者による申請であるため、登録は認められない(特許法第49条第7号)。
 だが、実際は、特許庁から冒認による出願かどうかを見極めるのは難しい。万が一、冒認出願が看過され、特許権等が付与されてしまった場合、その後に真の発明者が特許出願を行っても、公開公報又は特許公報の発行により新規性を喪失し、また、先願主義の規定により特許を受けることが出来なくなる可能性がある。そのため、真の権利者保護の権利救済措置が必要となる。

・昭和34年法改正以前(大正10年特許法が基礎となっている)
 冒認出願を拒絶し、また冒認出願による特許を無効(遡及的に効果が生じなくなること)とし、さらに、真の権利者による出願を冒認出願の出願日へ遡及させた。

・昭和34年法改正以後
 冒認出願は拒絶理由であるが、真の権利者による出願の冒認出願日への遡及効を廃止し、無効審判により、冒認出願による特許を無効とすることが出来るようにした。また、真の権利者は、訴訟上の手続きを経れば、冒認出願人に対して、出願人名義の変更や特許権移転登録手続の請求が認められる可能性があった。加えて、冒認出願により生じた損害賠償請求も行うことが出来た。

・平成23年法改正以後(現行法)
 上記(昭和34年法改正以後の法律)に加え、特許権が付与されてしまった冒認出願に対し、特許権移転請求手続(特許法第74条)を経て、真の権利者が特許権を得ることが出来るように明文化された。

 上記のように、平成23年法改正で、特許法第74条第1項において発明者取戻請求権が明文化されたため、冒認出願や共同出願違反における発明者取戻請求権に基づく訴訟の増加が考えられる。



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