著作権に含まれる支分権の1つであり、主に「公衆に直接聞かせることを目的として音楽の著作物を演奏する行為」を専有する権利(著作権法22条)を指す。
著作権法における公衆とは、「不特定の者」に加えて「特定多数の者」を含み(同法2条5項)、例えば家族等といった「特定少数の者」を対象とするとき以外は原則的に公衆にあたると考えられる。
「特定多数の者」における「多数」については著作物の種類や利用態様によって異なるため一概に○人以上とは定義できず、家族や親しい関係にある友人の範囲を超えて一定数以上の聴衆がいるときは、それが「会社の同僚」や「学校のクラスメイト」といった特定された者であったとしても、権利者からの許諾等を得ずに他人の楽曲を演奏(又は録音物を再生(同法2条23項7号))したときは当該演奏権を侵害する可能性がある。
なお、「公衆に直接聞かせることを『目的』」と定義しているように、ライブハウス等で公衆に対して聞かせることを目的として演奏を行えば、結果的に聴衆が親しい関係にある友人の1人のみだったとしても演奏権の侵害と成り得る。
一方で著作権法は「文化の発展に寄与すること」を目的とする(同法1条)ことから、文化的所産である著作物を公正で円滑に利用するために、一定の例外的な場合に限って権利を制限する規定(同法30条~47条の8)が存在する。
例えば高校の文化祭等で他人の楽曲を演奏する場合のように、営利を目的とせず、聴衆から料金や報酬を受け取らないときは、文化の発展を促す為にも著作財産権である演奏権は制限され、権利者からの許諾等は要しない(同法38条1項)。
しかし、利用に当たって出所を明示する慣行があるときは、当該他人の楽曲の出所を明示する必要があり(同法48条3項)、また、企業等の営利団体が行う場合には、料金を徴収しない無料の演奏であったとしても宣伝目的であると解されることから、本規定は適用されない点に留意すべきである。
その他、自身が演奏を行わなかったとしても、演奏を行う場所を有料で提供した場合は、いわゆる「カラオケ法理」が適用される可能性があり、演奏権を侵害すると判断され得る点にも留意する必要がある。