平成29年(行ケ)第10041号 審決取消請求事件等:熱間プレス部材
事件番号等
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平成29年(行ケ)第10041号 審決取消請求事件(甲事件)
平成29年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件(乙事件)
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裁判年月日
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平成30年3月12日
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担当裁判所
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知的財産高等裁判所(第4部)
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権利種別
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特許権(「熱間プレス部材」)
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訴訟類型
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行政訴訟:審決(無効・不成立)
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結果
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審決一部取消
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主文
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- 特許庁が無効2013-800226号事件について平成28年12月27日にした審決のうち,特許第5348431号の請求項1ないし3に係る部分を取り消す。
- 甲事件原告・乙事件被告の甲事件請求を棄却する。
- 訴訟費用は,甲事件乙事件を通じて,甲事件原告・乙事件被告の負担とする。
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趣旨
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【甲事件】
特許庁が無効2013-800226号事件について平成28年12月27日にした審決のうち,特許第5348431号の請求項4及び5に係る部分を取り消す。
【乙事件】
主文同旨
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取消事由
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【被告主張の取消事由】
(1) 本件発明1の進歩性に係る判断の誤り(取消事由1)
(2) 本件発明2の進歩性に係る判断の誤り(取消事由2)
(3) 本件発明3の進歩性に係る判断の誤り(取消事由3)
【原告主張の取消事由】
(1) 本件発明4の進歩性に係る判断の誤り(取消事由4)
(2) 本件発明5の進歩性に係る判断の誤り(取消事由5)
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裁判所の判断
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【取消事由1】
- 引用例1及び甲3に接した当業者が,引用発明における鋼板について,鋼板の強度を向上させる効果を有するTiをあえて含有しない構成とすることの動機付けは存在せず,むしろ阻害事由があるものと認められる。したがって,当業者が,引用発明に基づいて,相違点⑴に係る本件発明1の構成を容易に想到できるということはできない。 ・以上のとおり,本件優先日以前に頒布された刊行物である前記(ア),(イ)及び(エ)記載の文献には,Zn-Niめっき鋼板の熱間プレス部材の表面構造に関する記載はない。したがって,これらの記載から,熱間プレス部材である引用発明の鋼板表面の皮膜状態の構造が,Ni拡散領域上に,順にγ相に相当する金属間化合物層及びZnO層を有しており,25℃±5℃の空気飽和した0.5MNaCl水溶液中で示す自然浸漬電位が標準水素電極基準で-600~-360mVであることが技術常識であったと認めることはできない。また,本件特許の優先日時点の当業者において,技術常識に基づき,引用発明の鋼板表面の皮膜状態の構造が,Ni拡散領域上に,順にγ相に相当する金属間化合物層及びZnO層を有しており,かつ,25℃±5℃の空気飽和した0.5MNaCl水溶液中で示す自然浸漬電位が標準水素電極基準で-600~-360mVであることを認識することができたものとも認められない。よって,相違点(2)は実質的な相違点ではないとはいえないし,相違点(2)につき,引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に想到できたものということもできない。
- 引用例1には,引用発明が耐水素侵入性を有していることを示す記載はなく,このことを示唆する記載もない。また,本件特許の優先日当時において,引用発明が耐水素侵入性を有していることが技術常識であったことを認めるに足りる証拠はない。本件特許の優先日時点の当業者において,技術常識に基づき,引用発明が耐水素侵入性を有していることを認識することができたものとも認められない。よって,相違点(3)は実質的な相違点ではないとはいえないし,相違点(3)につき,引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に想到できたものということもできない。
- 以上によれば,当業者が,引用発明に基づいて,相違点⑴ないし⑶に係る本件発明1の構成を容易に想到できるということはできないから,本件審決の前記判断には誤りがあり,その誤りは本件審決の結論に影響を及ぼすものである。よって,取消事由1は理由がある。
【取消事由2】
- 当業者が,引用発明に基づいて,相違点⑵及び⑶に係る本件発明2の構成を容易に想到できるということはできないから,本件審決の判断には誤りがあり,その誤りは本件審決の結論に影響を及ぼすものである。よって,取消事由2は理由がある。
【取消事由3】
- 当業者が,引用発明に基づいて,相違点⑴ないし⑶に係る本件発明3の構成を容易に想到できるということはできないから,本件審決の判断には誤りがあり,その誤りは本件審決の結論に影響を及ぼすものである。よって,取消事由3は理由がある。
【取消事由4】
- 当業者が,引用発明に基づいて,相違点⑶及び⑹に係る本件発明4の構成を容易に想到できるということはできず,本件発明4は,当業者において容易に発明をすることができたものとはいえないから,本件審決の結論に誤りはない。
【取消事由5】
- 当業者が,引用発明に基づいて,相違点⑵,⑶及び⑻に係る本件発明5の構成を容易に想到できるということはできず,本件発明5は,当業者において容易に発明をすることができたものとはいえないから,本件審決の結論に誤りはない。
【結論】
- 以上検討したとおり,本件審決のうち,請求項4及び5に係る部分に誤りはなく,請求項1ないし3に係る部分は誤りである。よって,主文のとおり判決する。
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キーワード
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進歩性(相違点の判断)
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判決文