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知財裁判例速報

平成29年(ネ)第10009号 特許権侵害差止請求控訴事件,平成29年(ネ)第10023号 承継参加事件

  • 2017/07/31
  • 知財裁判例速報

事件番号等

平成29年(ネ)第10009号 特許権侵害差止請求控訴事件
平成29年(ネ)第10023号 承継参加事件

裁判年月日

平成29年7月12日

担当裁判所

知的財産高等裁判所(第4部)
(原審・東京地方裁判所平成27年(ワ)第12415号)

権利種別

特許権(「オキサリプラティヌムの医薬的に安定な製剤」)

訴訟類型

民事訴訟

結果

控訴人:控訴棄却
参加人:請求認容

趣旨

2 参加人 控訴人が,参加人に対し,参加人による別紙被告製品目録記載の各製品の生産,譲渡又は譲渡の申し出について,別紙特許権目録記載の各特許権の侵害に基づく差止請求権及び損害賠償請求権を有しないことを確認する。
  1. 控訴人
    (控訴の趣旨)
    (1) 原判決を取り消す。
    (2) 被控訴人は,別紙被告製品目録記載の各製剤について,生産,譲渡又は譲渡の申し出をしてはならない。
    (3) 被控訴人は,別紙被告製品目録記載の各製剤を廃棄せよ。
    (当審において追加した請求)
    (4) 被控訴人は,控訴人に対し,1000万円及びこれに対する平成29年3月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  2. 参加人
    控訴人が,参加人に対し,参加人による別紙被告製品目録記載の各製品の生産,譲渡又は譲渡の申し出について,別紙特許権目録記載の各特許権の侵害に基づく差止請求権及び損害賠償請求権を有しないことを確認する。

争点

  1. 被告各製品は本件発明1の技術的範囲に属するか
     ア 構成要件1A(濃度が1ないし5mg/ml)の充足性
     イ 構成要件1B(pHが4.5ないし6)の充足性
     ウ 構成要件1C(オキサリプラティヌムの水溶液からなり)の充足性
     エ 構成要件1D(医薬的に許容される期間の貯蔵後,製剤中のオキサリプラティヌム含量が当初含量の少なくとも 95%であり)の充足性
     オ 構成要件1E(該水溶液が澄明,無色,沈殿不含有のままである)の充足性
     カ 構成要件1G(医薬的に安定)の充足性
  2. 被告各製品に延長された本件特許1の効力が及ぶか
  3. 本件特許1は特許無効審判により無効にされるべきものか
    ア 乙1発明による進歩性欠如
    イ 「医薬的に許容される期間」に関する明確性要件違反
  4. 被告各製品は本件発明2の技術的範囲に属するか
    ア 構成要件2B,2F及び2Gの「緩衝剤」の充足性
    イ 構成要件2Fの「シュウ酸」の充足性
  5. 本件特許2は特許無効審判により無効にされるべきものか
    ア 乙1発明による進歩性欠如
    イ 乙14発明による新規性欠如又は進歩性欠如
    ウ 「緩衝剤の量」に関する明確性要件違反
    エ 「シュウ酸またはそのアルカリ金属塩」に関するサポート要件違反の有無
    オ 「シュウ酸またはそのアルカリ金属塩」に関する実施可能要件違反の有無
  6. 本件特許2について訂正の対抗主張の成否
    ア 本件訂正により無効理由が解消するか
    イ 構成要件2H(pHが3ないし4.5)の充足性

裁判所の判断

  • 本件発明1の構成要件1C(オキサリプラティヌムの水溶液からなり)は,オキサリプラティヌムと水のみからなる水溶液であって,他の添加剤等の成分を含まないものであることを意味すると解されるところ,被告各製品は,オキサリプラティヌムと水のほか,酒石酸及び水酸化ナトリウムが添加されているものであるから,構成要件1Cを充足しない。
  • 当審における控訴人の主張は,いずれも採用の限りではなく,これらを踏まえても,本件発明2における「緩衝剤」としての「シュウ酸」は,添加シュウ酸に限られ,解離シュウ酸を含まないものと解されるべきである。したがって,解離シュウ酸を含むのみで,シュウ酸又はそのアルカリ金属塩が添加されていない被告各製品は,構成要件2B,2F及び2Gの「緩衝剤」を含有せず,これらの構成要件を充足しない。
  • 結論
     (1) 以上によれば,被告各製品は,本件発明1の構成要件1Cを充足せず,また,本件発明2の構成要件2B,2F及び2Gを充足しないから,その余の構成要件について検討するまでもなく,被告各製品は,本件発明1及び2のいずれの技術的範囲にも属しない。そうすると,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の各請求は,当審における追加請求も含めていずれも理由がない(なお,控訴人の差止・廃棄請求は,被控訴人から参加人に事業譲渡がされたことにより,現在においては,被控訴人には特許権侵害のおそれがなくなったという点においても理由がないものといえることを付言しておく。)。したがって,控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,また,控訴人の当審における追加請求も理由がないから,これを棄却することとする。
     (2) 弁論の全趣旨によれば,参加人は,平成28年12月1日,被控訴人から,被告各製品に係る事業の譲渡を受け,同事業に関して被控訴人が負うべき義務を承継したことが認められるところ,上記(1)によれば,参加人の当審における請求は理由があるから,これを認容することとする。

キーワード

構成要件充足性/出願経過/用語の意義(緩衝剤)


 

判決文