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知財裁判例速報

平成28年(行ケ)第10044号審決取消請求事件:赤外線センサIC,赤外線センサ及びその製造方法

  • 2017/06/26
  • 知財裁判例速報

事件番号等

平成28年(行ケ)第10044号 審決取消請求事件

裁判年月日

平成29年6月20日

担当裁判所

知的財産高等裁判所(第4部)

権利種別

特許権(「赤外線センサIC,赤外線センサ及びその製造方法」)

訴訟類型

行政訴訟(無効・成立)

結果

審決取消

趣旨

  1. 特許庁が無効2013-800203号事件について平成28年1月4日にした審決を取り消す。
  2. 訴訟費用は被告の負担とする。

取消事由

(1) 引用発明Cに基づく本件発明1の進歩性判断の誤り(取消事由1)
 ア 引用発明Cの認定の誤り及び相違点の認定の誤り
 イ 相違点c-1の判断の誤り
 ウ 相違点c-2の判断の誤り
 エ 相違点c-3の判断の誤り

(2) 引用発明Aに基づく本件発明1の進歩性判断の誤り(取消事由2)  ア 引用発明Aの認定の誤り及び相違点の認定の誤り
 イ 相違点a-1の判断の誤り
 ウ 相違点a-3の判断の誤り
 エ 相違点a-2,a-4の判断の誤り

(3) 引用発明Bに基づく本件発明1の進歩性判断の誤り(取消事由3)
 ア 相違点b-1の判断の誤り
 イ 相違点b-2の判断の誤り
 ウ 相違点b-3の判断の誤り

(4) 本件発明2ないし18の進歩性判断の誤り(取消事由4)

裁判所の判断

  • 引用発明Cにおいて,相違点c-1及び相違点c-3に係る本件発明1の構成を備えるようにすることは,当業者が容易に想到することはできないから,相違点c-2について判断するまでもなく,本件発明1は,当業者が引用発明Cに基づいて容易に発明をすることができたものということはできない。よって,取消事由1は理由がある。
  • 引用発明Aにおいて,相違点a-3及び相違点a-4に係る本件発明1の構成を備えるようにすることは,当業者が容易に想到することはできないから,相違点a-1及び相違点a-2について判断するまでもなく,本件発明1は,当業者が引用発明Aに基づいて容易に発明をすることができたものということはできない。よって,取消事由2は理由がある。
  • 引用発明Bにおいて,相違点b-2及び相違点b-3に係る本件発明1の構成を備えるようにすることは,当業者が容易に想到することはできないから,相違点b-1について判断するまでもなく,本件発明1は,当業者が引用発明Bに基づいて容易に発明をすることができたものということはできない。よって,取消事由3は理由がある。
  • 本件発明14ないし18は,本件発明13の発明特定事項を全て含み,さらに他の限定を付したものであるから,当業者が引用発明A’ないしC’に基づいて,容易に発明をすることができたということはできない。よって,取消事由4は理由がある。
  • 以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由があるから,原告の請求を認容する。

キーワード

新歩性(引用発明の認定,相違点の認定,相違点の判断)/動機付け/阻害要因/周知技術の認定



実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。

 (c) 以上のとおり,赤外線検出器の検出能力を向上させるために,光吸収層に所定の濃度のp型ドーパントを含ませるのは,光吸収層(第2の化合物半導体層)の伝導帯の電子密度を低減させるという目的のために行われるものであって,また,それによって生じ得る現象を考慮しなければならないものである。
 そうすると,本件審決が認定するように,赤外線検出器において,おおよそ雑音を低減する手段として,光吸収層にp型ドーピングを行うことが,本件特許の出願日当時,周知であったと認めることはできない。
(ウ) 本件特許の出願日当時の周知技術
a 前記(イ)e(b)によれば,本件特許の出願日当時,周知であったと認められる技術事項は,甲5ないし7から,赤外線検出器(InSbデバイス)は,一般的に,光吸収層に所定の濃度のp型ドーパントを含ませることにより,それによって生じ得る現象を考慮しなければならないものの,光吸収層(第2の化合物半導体層)の伝導帯の電子密度を低減させることによって,その検出能力を向上させることができるという技術事項にとどまるというべきである(以下,この技術事項を「本件周知技術」という。)。

 

判決文