事件番号等
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平成29年(ネ)第10006号 損害賠償請求控訴事件
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裁判年月日
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平成29年6月13日
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担当裁判所
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知的財産高等裁判所(第3部)
(原審:東京地方裁判所 平成26年(ワ)第18671号)
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権利種別
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著作権(「絵画の著作物」)/プライバシー
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訴訟類型
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民事訴訟
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結果
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控訴棄却
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趣旨
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- 原判決中控訴人敗訴部分(主文第1項)を取り消す。
- 被控訴人の請求を棄却する。
- 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
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争点
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(3)本件展示会の来訪者に対し写真撮影を許可したこと,自ら甲37ウェブサイトに投稿したこと及び本件展示会の来訪者に対して写真撮影を禁止したり,撮影した写真や被控訴人の氏名を含む本件展示会の内容をウェブサイト上に掲載することを禁止するなどの適切な措置を講じなかったことによる複製権侵害・プライバシー侵害の不法行為ないしはその幇助による共同不法行為(不法行為③)の成否(争点3),他未掲載
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裁判所の判断
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- 以上の次第であるから,本件控訴は理由がない。よって,本件控訴を棄却する。
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キーワード
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展示権/公表権/公衆送信権/複製権/プライバシー/被害回復措置/過失責任
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実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。
控訴人は,救援センターを「人権の砦」として信頼しており,かかる救援センターが出品予定者の承諾を得ないまま本件パンフレットに絵画を掲載するなどという違法な事態は全く想定していなかったし,救援センターが被控訴人の承諾を得ないまま本件パンフレットに出品作を掲載し,更には同承諾を得ないまま本件パンフレットの本件ウェブサイトへの掲載等を依頼したとは全く考えてもみなかったのであるから,本件展示会の主催者である救援センターの依頼を受けて会場を無償で提供し,それに付随して本件パンフレットの本件ウェブサイトへの掲載等の依頼を受けたにすぎない控訴人には,改めて出品者である被控訴人に対して承諾の意思を確認する義務はなく,救援センターに対して被控訴人を始めとする出品者の意思を確認する義務もなかったというべきである,などと主張する。
しかしながら,救援センターがいかに公権力の弾圧に対する救援活動を行ってきた実績があり,控訴人にとって信頼に足る団体であったとしても,そのことと,同団体が著作権を始めとする知的財産権関係の法令遵守についても明るいか否かは別問題であって,依頼を受けたとはいえ,最終的に自らの判断で他人の著作物である絵画が掲載された本件パンフレットの画像をウェブサイトにアップロードする以上,控訴人としては,救援センターを通じるなどして著作権者(被控訴人)の許諾が得られているかどうかを自ら確認し,その確認が取れなければアップロード自体を差し控えるなどの適切な対応を採るべきであったことは当然である。したがって,これを怠った以上,控訴人は過失責任を免れない。
実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。
控訴人は,本件展示会の主催者が救援センターであって控訴人ではないこと,本件展示会の出品者と救援センターとの関係,控訴人の本件展示会への関与の経緯等からして,(受刑者であるとの情報を実名でインターネット上に公表することにつき)被控訴人本人の承諾の有無に関して救援センター等に確認していなかったとしても,控訴人に過失がないことは明らかである,などと主張する。
しかしながら,前記のとおり,ある者が服役中であるという事実は,その者の名誉あるいは信用に直接にかかわる事項であり,その者は当該事実を公表されないことにつき,法的保護に値する利益を有するものというべきであるから,自らの判断で受刑者であることを実名をもって表示する(そのような投稿を行う)以上,本人である被控訴人の承諾があるか否かを確認する義務があることは当然である。したがって,これを怠った以上,控訴人は過失責任を免れない(この点に関し,控訴人が主張する上記の事情は,何ら責任の有無を左右するものではない。)。
判決文