平成30年(ワ)第9534号 特許権侵害等請求事件:検査分析のサービスを提供するシステムおよび方法
事件番号等
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平成29年(ワ)第22884号 特許権侵害差止等請求事件
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裁判年月日
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平成30年10月24日
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担当裁判所
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東京地方裁判所(民事第29部)
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権利種別
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特許権(「検査分析のサービスを提供するシステムおよび方法」)
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訴訟類型
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民事訴訟
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結果
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請求棄却
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主文
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- 原告の請求を棄却する。
- 訴訟費用は原告の負担とする。
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趣旨
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- 被告は,原告に対し,1600万円及びこれに対する平成30年5月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
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争点
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(1) 被告方法は本件各発明の構成要件を充足するか(争点1)
ア 被告方法は「検査分析装置に対するリモート操作による検査分析」,「検査分析」及び「検査分析装置」(構成要件AないしJ,L)を充足するか(争点1-1)
イ 被告方法は「ユーザガイドサーバ」が「案内情報を提示する」(構成要件B)を充足するか(争点1-2)
ウ 被告方法は「仮のユーザID」,「パスワード」(構成要件C,D)を充足するか(争点1-3)
エ 被告方法は「模擬操作」(構成要件D)を充足するか(争点1-4)
オ 被告方法は「認証用のユーザID」,「パスワード」,「認証用のユーザIDおよびパスワードを用いて当該ユーザ認証サーバにアクセス」(構成要件E,F)を充足するか(争点1-5)
カ 被告方法は「操作レシピーデータ」(構成要件K,L)を充足するか(争点1-6)
(2) 損害の発生の有無及びその額(争点2)
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裁判所の判断
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- 本件各発明の特許請求の範囲に記載された「検査分析」及び「検査分析装置」の各用語は,その外延が明確ではなく,特許請求の範囲中にその意義を明確にし得る記載もない。発明を実施するための最良の形態として,検査分析の対象は,半導体ウェハ,半導体チップに限定されるものでない旨の記載がある(【0027】)が,この記載は,その前後の説明をみれば,実施の形態を示すに当たり,検査分析対象を半導体ウェハとすることを示したものにすぎず,半導体分野ではない分野における何らかの検査分析を含み得ることを示すものであるとは認められない。その他,本件明細書等を精査しても,半導体分野に関連しない検査分析についての説明は示されていない。そうすると,本件各発明の特許請求の範囲に記載された「検査分析」とは,半導体分野に関する検査分析を指し,「検査分析装置」とは,その装置を指すと解するのが自然かつ合理的である。これに対し,原告は,特許請求の範囲には半導体又は半導体分野という文言は記載されておらず,要約書の記載を考慮することは特許法70条3項により許されないのであって,「検査分析」及び「検査分析装置」の意義は,半導体又は半導体分野の検査分析に限定されるものではないと主張するが,本件明細書等の記載を考慮することは,要約書の記載を考慮することとは異なり,特許法70条2項に基づくものである上,本件明細書等の記載を考慮した上記の検討に照らせば,原告の主張を採用することはできない。
- 前記第2の2前提事実⑸に認定したとおり,被告は,被告ウェブサイトに動画広告を掲載するサービスを提供しているが,本件全証拠によっても,これが半導体分野に関する検査分析であると認めることはできない。以上によれば,被告方法は,「検査分析装置に対するリモート操作による検査分析」,「検査分析」及び「検査分析装置」(構成要件AないしJ,L)を充足する20 と認めることはできない。
- 被告方法が半導体分野に関するものではないことを措くとしても,原告の主張は次のとおり失当である。すなわち,原告は,動画広告原稿に基づいて動画広告掲載が正常に行われるか否か及び動画広告原稿の電子データにコンピュータウイルスが含まれているか否かを摸擬チェックすることをもって摸擬操作又は検査分析である旨を主張するが,本件各発明において規定されている摸擬操作及び正式検査分析要求を受けて行われる検査分析の双方のステップのいずれか一方のみを主張するにとどまるのであって,他方のステップに係る主張を欠くものである。また,原告の主張を,被告ウェブサイトに動画広告を掲載すること自体を「検査分析」に当たる旨をいうものと解するとしても,動画広告の掲載が,どのような対象について何を検5 査分析する行為であるのかに関する主張がないから,検査分析についての主張を欠いているといわざるを得ない。
- 争点1-5に関し,原告は,被告方法に「ユーザ認証サーバ」(構成要件F,G)が存在することについて何ら主張していないのであり,被告方法が「ユーザ認証サーバ」を充足すると認めることはできない。また,争点1-3に関し,本件全証拠によっても,被告が,広告主に対して,仮のユーザID,認証用ユーザID及びパスワードを発行していると認めるに足りない。
- したがって,被告方法は,本件各発明の構成要件を充足しない。
- 以上によれば,その余の争点につき検討するまでもなく,原告の請求には理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
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キーワード
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構成要件充足性/特許法70条第3項
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判決文