事件番号等
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平成29年(ワ)第22884号 特許権侵害差止等請求事件
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裁判年月日
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平成30年10月5日
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担当裁判所
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東京地方裁判所(民事第29部)
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権利種別
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特許権(「加熱調理器」)
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訴訟類型
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民事訴訟
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結果
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請求棄却
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主文
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- 原告の請求をいずれも棄却する。
- 訴訟費用は原告の負担とする。
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趣旨
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- 被告は,別紙1物件目録記載の各製品を製造し,又は販売してはならない。
- 被告は,別紙1物件目録記載の各製品を廃棄せよ。
- 被告は,原告に対し,4億1700万円及びこれに対する平成29年7月20日から支払済みまで年5分の割合の金員を支払え。
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争点
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(1) 被告各製品は,本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)
ア 被告各製品は「補強板」(構成要件D)を充足するか(争点1-1)
イ 被告各製品は「断熱層」(構成要件E)を充足するか(争点1-2)
ウ 被告各製品は「トッププレート」,「サッシュ」及び「補強板」(構成要件AないしE)を充足するか(争点1-3)
(2) 本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか(争点2)
ア 本件特許は特許法36条6項2号に違反しているか(争点2-1)
イ 本件特許は特許法36条6項1号に違反しているか(争点2-2)
ウ 本件特許は特許法36条4項1号に違反しているか(争点2-3)
エ 本件発明は新規性又は進歩性を欠くものであるか(争点2-4)
(3) 損害の発生の有無及びその額(争点3)
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裁判所の判断
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- 本件発明と公然実施品1とは,相違点1-2’において相違するからこれを同一と認めることはできないが,本件発明は,本件出願日前に,当業者が公然実施品1に公知の構成を適用して,容易に発明をすることができたものと認められる。そうすると,本件発明についての特許は,特許法29条2項に違反してされたものであって,同法123条1項2号の無効理由があり,特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,原告は,被告に対し,本件特許権を行使することができない。
- 以上によれば,その余の争点につき検討するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,これらをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
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キーワード
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権利行使の制限(進歩性)
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実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。
イ 容易想到性について
前記⑶に認定のとおり,乙13公報には,誘導加熱調理器においてサッシュと本体ケース連結金属板とを別部材により構成して両者を当接させてねじで接合することが記載されているから,補強板とサッシュを別部材にすることは,本件出願当時,公知の構成であったといえる。
そして,弁論の全趣旨によれば,公然実施品1のサッシュは,複雑な形状であり,金属ブロックから切削加工や鋳造加工等によって製造せざるを得ず,金属板からプレス加工によって簡単に低コストで製造することはできないものであることが認められ,このような部品に接した当業者においては,製造コストが高い機械加工により製造した部品を,製造コストが安い機械加工であるプレス加工により製造するために金属板部品に置き換える動機付けがあると認められる。よって,公然実施品1に接した当業者において,公然実施品1に前記公知の構成を適用して,相違点1-2’に係る本件発明の構成とすることは,本件出願日当時,容易に想到し得たことというべきである。
判決文