平成29年(行ケ)第10216号 審決取消請求事件:染毛剤,その使用方法及び染毛剤用品
事件番号等
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平成29年(行ケ)第10216号 審決取消請求事件
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裁判年月日
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平成30年8月22日
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担当裁判所
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知的財産高等裁判所(2部)
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権利種別
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特許権(「染毛剤,その使用方法及び染毛剤用品」)
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訴訟類型
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行政訴訟:審決(拒絶)
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結果
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審決取消
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主文
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- 特許庁が不服2016-7849号事件について平成29年10月11日にした審決を取り消す。
- 訴訟費用は被告の負担とする。
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趣旨
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- 主文同旨
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取消事由
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- 取消事由1(新規事項追加の判断の誤り)
- 取消事由2(明確性要件違反の判断の誤り)
- 取消事由3(実施可能要件違反の判断の誤り)
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裁判所の判断
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ア 新たな技術的事項導入の有無について
特許請求の範囲等の補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならないところ(特許法17条の2第3項),上記の「最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項」とは,当業者によって,明細書,特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項を意味し,当該補正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものであるときは,当該補正は「明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる(知財高裁平成18年(行ケ)第10563号同20年5月30日特別部判決・判例タイムズ1290号224頁参照)。
これを本件についてみるに,前記で認定したような本願発明において,撹拌羽根の形状,寸法等の撹拌条件は発明特定事項として重要な要素といえるところ,当初明細書等に本件撹拌羽根を用いることは明示されていない。しかし,当初明細書の【0012】には,①撹拌にET-3Aを用いること,②「撹拌羽」は,回転中心となる支軸の下端から漢字の「山」の字を構成する形態で対の羽部を延設した「撹拌羽」であること,③「撹拌羽」の回転半径は,内容量が200mlで内径約6cmのビーカー等の円筒形容器の半径(約3cm)より僅かに小さいことが記載されているところ,前記(1)イの事実によると,当初明細書に記載されている上記「撹拌羽」の形状,寸法は,ET-3Aの付属品である200mlビーカー用の本件撹拌羽根のそれと一致するものである。
また,前記(1)イの事実によると,ET-3Aは,昭和60年頃から長年にわたって販売されており,多数の当業者によって使用されてきたと推認される実験用の機械であるところ,販売開始以来,付属品である本件撹拌羽根の形状,寸法に変更が加えられたことは一度もなく,しかも,遅くとも平成17年7月頃には,本件撹拌羽根は,ET-3Aとともに日光ケミカルズのカタログに掲載されていた。さらに,当初明細書の記載に適合するような形状,寸法のET-3A用の撹拌羽根が,ET-3A本体とは別に市販されていたことは証拠上認められない。
以上の事実を考え併せると,当業者が,当初明細書等に接した場合,そこに記載されている撹拌羽が,ET-3Aに付属品として添付されている200mlビーカー用の本件撹拌羽根を指していると理解することができるものと認められる。そして,特定事項aは,200mlビーカー用の本件撹拌羽根の実寸法を追加するものであるから,特定事項aを本願の請求項1に記載することが,明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で新たな技術的事項を導入するものとはいえず,新規事項追加の判断の誤りをいう原告の主張は理由がある。
イ 被告の主張について
被告は,ET-3Aのような乳化試験機において,付属品以外の撹拌羽根を任意に選択して用いることができるのは明らかであるところ,ET-3Aに取付け可能な撹拌羽根が単体で市販されていたり,ET-3Aが付属品なしで取引されていたりすることからすると,当業者が,当初明細書等の記載から,そこでいう撹拌羽根が,200mlビーカー用の本件撹拌羽根を指していると理解することはないなどと主張する。
しかし,前記(1)イ(エ)のとおり,ET-3Aに取付け可能な撹拌羽根として市販されていることが証拠上確認できるものは,そのいずれもが当初明細書に記載されているような回転中心となる支軸の下端から漢字の「山」の字を構成する形態で対の羽部を延設したものではないから,それらの撹拌羽根が市販されているという事実をもって,上記アの認定は左右されない。
また,証拠(乙6の1・2)によると,いわゆるインターネットオークションにおいて,本件撹拌羽根が付属品として添付されていない中古品のET-3Aが取引されている事実は認められるものの,このような取引の事実があったからといって上記アの認定が左右されることはないというべきである。
よって,被告の上記主張はいずれも採用できない。
ウ 小括
以上のとおり,特定事項aは新たな技術的事項を導入するものではなく,特定事項aを本願の請求項1に追加することは願書に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内においてするものというべきである。審決の明確性及び実施可能性についての判断は,特定事項aの追加が新規事項の追加に当たり,本件補正を却下すべきことを前提としてされたものであるから,特定事項aの追加が新規事項の追加に当たるとした判断の誤りは審決の明確性及び実施可能性についての判断にも影響を及ぼすものといえる。
したがって,審判において,特定事項aの追加が新規事項の追加に当たらないことを前提に,再度,審理・判断を行う必要があるものと認められる。
第6 結論
以上の次第で,取消事由1は理由があり,審決にはその結論に影響を及ぼす違法があるから,原告の請求を認容することとして,主文のとおり判決する。
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キーワード
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補正・訂正の許否(新規事項の追加)
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判決文