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知財裁判例速報

平成28年(ワ)第37577号 損害賠償請求反訴事件等:データーベースの著作物

  • 2018/04/27
  • 知財裁判例速報

事件番号等

平成28年(ワ)第37577号 損害賠償請求反訴事件等

裁判年月日

平成30年3月28日

担当裁判所

東京地方裁判所(民事第29部)

権利種別

著作権(データーベースの著作物)

訴訟類型

民事訴訟

結果

請求棄却

主文

  1. 原告の本訴請求をいずれも棄却する。
  2. 被告の反訴請求をいずれも棄却する。
  3. 訴訟費用は,本訴反訴を通じてこれを10分し,その9を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。

趣旨

  1. 本訴請求
     ⑴ 被告は,別紙1被告物件目録記載のデータベースを複製し,又は公衆送信(送信可能化を含む。)してはならない。
     ⑵ 被告は,別紙1被告物件目録記載のデータベース及びその複製物(同データベースを格納した記録媒体を含む。)を廃棄せよ。
     ⑶ 被告は,原告に対し,10億円及びこれに対する平成27年9月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  2. 反訴請求
     ⑴ 原告は,被告に対し,1億1000万円及びこれに対する平成28年10月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
     ⑵ 原告は,別紙2謝罪広告目録記載の謝罪広告を,同目録記載の条件で各1回掲載せよ。

争点

⑴ 著作権侵害を原因とする本訴請求に関連する争点
 ア 「eBASEserver」は,データベースの著作物であるか(争点1-1)
 イ 「FOODS信頼ネット」にデータが登録・蓄積されて形成されたデータベースの著作権は,本件業務提携契約書4条1項ただし書の規定により,原告に帰属していたか(争点1-2)
 ウ 「ASP規格書システム」のデータベース(被告データベース)は,原告が著作権を有するデータベースの著作物(「FOODS信頼ネット」のデータベース又は「eBASEserver」)の複製物又は翻案物であるか(争点1-3)
 エ 原告は,本件サーバ移管に際し,被告に対し,被告が「FOODS信頼ネット」のデータベースの体系的構成及び辞書を複製及び翻案することを許諾したか(争点1-4)
 オ 原告が受けた損害の額(争点1-5)
⑵ 債務不履行を原因とする本訴請求に関連する争点
 ア 被告は,原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様に基づいて被告データベースを構築したか。また,このことが本件使用許諾契約に違反する債務不履行に当たるか(争点2-1)
 イ 原告が受けた損害の額(争点2-2)
⑶ 不法行為を原因とする本訴請求に関連する争点
 ア 被告は,原告から取得した「eBASEserver」のデータベース仕様に基づいて被告データベースを構築したか。また,これにより,原告の法的保護に値する利益が侵害されたか(争点3-1)
 イ 原告が受けた損害の額(争点3-2)
⑷ 本訴の提起が不法行為に当たることを原因とする反訴請求に関連する争点
 ア 本訴の提起は,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるか(争点4-1)
 イ 被告が受けた損害の額(争点4-2)
⑸ 名誉毀損を原因とする反訴請求に関連する争点
 ア 原告が訴状等を提出し,被告プレスリリースに引き続き,原告プレスリリースを掲載し,訴状等を陳述した一連の行為,又はこれら個別の行為はそれぞれ,被告の社会的評価を低下させるものか(争点5-1)
 イ 原告の行為は,応酬的言論として違法性を欠くか(争点5-2)
 ウ 原告の行為は,公共の利害に関する事実に係り,その目的が専ら公益を図ることにあり,前提としている事実の重要な部分又は摘示した事実が真実であるために違法性を欠くか。又は,同事実を真実と信ずるについて相当な理由があるために故意又は過失が否定されるか(争点5-3)
 エ 被告が受けた損害の額(争点5-4)
 オ 謝罪広告の必要性(争点5-5)
⑹ 不競法に基づく反訴請求に関連する争点
 ア 原告が原告プレスリリースを掲載した行為は,「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し,又は流布する行為」に当たるか(争点6-1)
 イ 被告が受けた損害の額(争点6-2)
 ウ 謝罪広告の必要性(争点6-3)

裁判所の判断

  • 以上のとおり,原告の本訴請求及び被告の反訴請求にはいずれも理由がないから,主文のとおり判決する。

キーワード

データベースパッケージソフトウェア/著作者人格権/債務不履行/名誉毀損/不正競争防止法



実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。

  原告の主張によれば,「eBASEserver」は,食品の商品情報を広く事業者間で連携して共有する方法を実現するためのデータベースを構築するためのデータベースパッケージソフトウェアであって,食品の商品情報が蓄積されることによりデータベースが生成されることを予定しているものである。そうすると,このような食品の商品情報が蓄積される前のデータベースパッケージソフトウェアである「eBASEserver」は,「論文,数値,図形その他の情報の集合物」(著作権法2条1項10号の3)とは認められない
  原告は,「eBASEserver」に搭載されている辞書情報を「情報」と捉え,この集合物をもって「データベース」と主張するものとも解されるが,原告の主張によっても,これらの辞書ファイルは,商品情報の登録に際して,当該商品情報のうち特定のデータ項目を入力する際に参照されるものにすぎないのであって,辞書ファイルが備える個々の項目が,「電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成」(著作権法2条1項10号の3)されていると認めることは困難である。

 

判決文