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知財裁判例速報

平成29年(行ケ)第10035号 審決取消請求事件:空気極材料及び固体酸化物型燃料電池

  • 2018/03/26
  • 知財裁判例速報

事件番号等

平成29年(行ケ)第10035号 審決取消請求事件

裁判年月日

平成30年2月27日

担当裁判所

知的財産高等裁判所(第1部)

権利種別

特許権(「空気極材料及び固体酸化物型燃料電池」)

訴訟類型

行政訴訟:審決(無効・不成立)

結果

請求棄却

主文

  1. 原告の請求を棄却する。
  2. 訴訟費用は原告の負担とする。

趣旨

  1. 特許庁が無効2015-800088号事件について平成28年12月20日にした審決を取り消す。

争点

  1. 取消事由1(本件訂正の適否に係る判断の誤り)
  2. 取消事由2(新たに補充した無効理由1及び無効理由1に係る各判断の誤り)
  3. 取消事由3(実施可能要件に係る判断の誤り)
  4. 取消事由4(本件発明1及び2のサポート要件に係る判断の誤り)
  5. 取消事由5(本件発明3及び4のサポート要件に係る判断の誤り)
  6. 取消事由6(新規性又は進歩性に係る判断の誤り)

裁判所の判断

  • 原告の取消事由はいずれも理由がないから,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。

キーワード

特許請求の範囲の記載要件(サポート要件)/明細書の記載要件(実施可能要件)/手続違背(特許法131条の2)



実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。

  ア 特許法131条の2第1項本文は,請求書の補正は,その要旨を変更してはならない旨規定するのに対し,同条2項は,審判長は,請求書に係る請求の理由の補正がその要旨を変更するものであっても,当該補正が審理を不当に遅延させるおそれがないことが明らかなものであり,かつ,被請求人も同意したことその他の同項各号のいずれかに該当する事由があるときは,決定をもって,当該補正を許可することができる旨を規定し,同条4項は,同条2項の決定に対しては,不服を申し立てることができない旨を規定する。

上記各規定は,請求の理由の要旨を変更する補正については,審理対象を変動させるものであるから,審理の遅延を防止する観点から,これを許可することができないとする一方,要旨を変更する補正であったとしても,審理の遅延という観点から不当なものではなく,被請求人も同意するなど特段の事情が認められる場合には,審判長の裁量的判断として当該補正を許可することができるものとし,このような場合において,仮に不許可の決定がされたとしても,審判請求人はいつでも別途の無効審判請求をすることが可能であるから,審判請求人は,当該不許可決定に対しては不服を申し立てることができないとしたものである。

そうすると,審判請求人が,請求書の補正が要旨を変更するものではない旨争っている場合において,審判合議体において当該補正が要旨を変更するものであることを前提として,これを許可することができないと判断するときは,審判合議体は,同条1項に基づき,当該補正を許可しない旨の判断を示すのが相当である。それにもかかわらず,審判長が,同条1項に基づく不許可の判断を示さず,同条2項に基づき,裁量的判断として補正の不許可決定をする場合には,審判請求人は,同条4項の規定により,審判手続において,当該決定に対しては不服を申し立てることができず,審決取消訴訟においても,上記決定が裁量権の範囲を逸脱又は濫用するものでない限り,上記決定を争うことができなくなるものと解される。このような結果は,審判請求人に対し,要旨の変更の可否を争う機会を実質的に失わせることになり,手続保障の観点から是認することができない。

※ただし結論は、「審決の判断は,結論において取り消すべき違法はなく,原告の主張は,審決の結論に影響を及ぼさない事項についての違法をいうものにすぎず,採用することができない。」

 

判決文