事件番号等
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平成27年(ワ)第31774号 特許権侵害差止等請求事件(本訴)
平成28年(ワ)第15181号 損害賠償請求事件(反訴)
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裁判年月日
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平成30年3月2日
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担当裁判所
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東京地方裁判所(民事第40部)
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権利種別
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特許権(「螺旋状コイルインサートの製造方法」)
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訴訟類型
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民事訴訟
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結果
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請求棄却
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主文
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- 原告の本訴請求をいずれも棄却する。
- 原告は,被告に対し,550万円及びこれに対する平成27年11月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
- 被告のその余の反訴請求を棄却する。
- 訴訟費用は,本訴反訴を通じてこれを3分し,その2を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。
- この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。
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趣旨
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- 本訴
(1) 被告は,別紙イ号方法目録記載の方法を使用してはならない。
(2) 被告は,別紙イ号方法目録記載の方法により生産した別紙イ号物件目録記載の製品を使用し,譲渡し,貸し渡し,輸出し若しくは輸入し,又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。
(3) 被告は前項記載の製品を廃棄せよ。
(4) 訴訟費用は被告の負担とする。
(5) 仮執行宣言
- 反訴
(1) 原告は,被告に対し,2000万円及びこれに対する平成27年11月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
(3) 仮執行宣言
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争点
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(1) 本訴
ア 原告代表者の発明者性
イ 被告の先使用権の有無
ウ 進歩性欠如による無効①(乙1発明を主引例,乙31発明及び乙32発明を副引例とするもの)
エ 進歩性欠如による無効②(乙1’発明を主引例,乙31発明及び乙32発明を副引例とするもの)
オ 進歩性欠如による無効③(乙1’発明を主引例,乙57発明及び乙32発明を副引例とするもの)
カ 職務発明による法定実施権の有無(仮定的抗弁)
(2) 反訴
ア 本訴の提起による不法行為
(ア) 本訴提起の違法性
(イ) 被告の損害発生の有無及びその額
イ 本訴の維持による不法行為
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裁判所の判断
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- 原告が本件発明の発明者から特許を受ける権利を承継したものということはできないのであるから,本件特許は,その発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願に対してされたものとして,特許法123条1項6号所定の無効理由を有する。したがって,原告は被告に対して本件特許に基づく権利行使をすることができないから(特許法104条の3第1項),その余の点について判断するまでもなく,原告の本訴請求はいずれも理由がない。
- 原告の本訴請求は理由がないところ,前記2(5)に説示したとおり,原告代表者は福島工場において本件発明を知得した上,本件特許を出願したものといわざるを得ないのであって,原告による本件特許の出願は冒認出願であったというべきである。そして,本件特許の出願をD弁理士に依頼したのは原告代表者自身であり,被告の福島工場を訪れたのも原告代表者自身であって,本件特許の出願については原告代表者が主体的に関わったものと認められることなどによれば,原告代表者が記憶違いや通常人にもあり得る思い違いをして本件特許出願に及んだということもできない。加えて,原告が本訴提起前に被告から本件特許の出願が冒認出願であるとの指摘を受けながらあえて本訴提起に及んだと認められることは,前記2(2)シ(イ)及び(ウ)記載のとおりである。そうすると,本訴請求において原告の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものであることはもちろん,原告が,そのことを知りながら,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したというべきであるから,本訴の提起は裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものと認められるといわざるを得ない。したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告による本訴の提起は被告に対する違法な行為というべきである。
- よって、原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,被告の反訴請求は,原告に対し,不法行為に基づき550万円及びこれに対する不法行為の日(本訴提起の日)である平成27年11月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,これを認容することとし,その余の反訴請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
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キーワード
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冒認出願/本訴提起の違法性
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実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。
訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは,当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者が,そのことを知りながら,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である(最高裁昭和60年(オ)第122号同63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁,最高裁平成7年(オ)第160号同11年4月22日第一小法廷判決・裁判集民事193号85頁参照)。
判決文