平成29年(ネ)第10015号 特許権侵害差止請求控訴事件:オキサリプラチン溶液組成物ならびにその製造方法及び使用
事件番号等
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平成29年(ネ)第10015号 特許権侵害差止請求控訴事件
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裁判年月日
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平成29年7月20日
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担当裁判所
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知的財産高等裁判所(第2部)
(原審・東京地方裁判所平成27年(ワ)第28698号)
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権利種別
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特許権(「オキサリプラチン溶液組成物ならびにその製造方法及び使用」)
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訴訟類型
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民事訴訟
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結果
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控訴棄却
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趣旨
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- 原判決を取り消す。
- 被控訴人は,別紙被控訴人製品目録記載1~3の各製剤の生産,譲渡,輸入又は譲渡の申出をしてはならない。
- 被控訴人は,別紙被控訴人製品目録記載1~3の各製剤を廃棄せよ。
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争点
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- 技術的範囲への属否
被告は,被告製品が構成要件A,C,D及びEを充足すること並びに被告製品に存在するシュウ酸の量が構成要件G及びIに規定されているモル濃度の範囲内にあることを争っていないから,技術的範囲への属否についての争点は,「有効安定化量の緩衝剤」(構成要件B),「緩衝剤がシュウ酸」(同F)及び「緩衝剤」(同G及びI)の各構成要件充足性となる(なお,前記訂正請求の可否は構成要件充足性に関する判断に影響しない。)。
- 無効理由の有無
被告は,「緩衝剤」にはオキサリプラチン水溶液において分解して生じるシュウ酸も含まれるという原告の主張(後記3(1)(原告の主張))を前提とすれば,本件特許には次の無効理由があり,特許無効審判により無効にされるべきものであるから,原告は本件特許権を行使することができない(特許法104条の3第1項)と主張する。なお,後記ア~ウは,本件発明及び本件訂正発明の両発明(以下「本件発明等」という。)に関する無効理由である。
ア 国際公開96/04904号公報(以下「乙7の1公報」という。)に記載された発明(以下「乙7発明」という。)に基づく新規性又は進歩性欠如
イ 米国特許第5716988号公報(以下「乙9公報」という。)に記載された発明(以下「乙9発明」という。)に基づく進歩性欠如
ウ 実施可能要件(特許法36条4項1号)及びサポート要件(同条6項1号)違反
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裁判所の判断
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- 本件発明における「緩衝剤」としての「シュウ酸」は,添加シュウ酸に限られ,解離シュウ酸を含まないものと解され,被控訴人各製品は,解離シュウ酸を含むものの,シュウ酸が添加されたものではないから,「緩衝剤」を含有するものとはいえず,構成要件B,F及びGの「緩衝剤」に係る構成を有しない。
- したがって,被控訴人各製品は,その余の構成要件について検討するまでもなく,本件発明及び本件訂正発明の技術的範囲に属しない。
- 以上の次第で,控訴人の本件各請求は,その余の点を判断するまでもなく,いずれも理由がなく,原判決は,結論において相当であるから,本件控訴を棄却する。
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キーワード
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構成要件充足性/用語の意義(「緩衝剤」)
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判決文