事件番号等
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平成28年(行ケ)第10071号 審決取消請求事件
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裁判年月日
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平成29年6月14日
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担当裁判所
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知的財産高等裁判所(第3部)
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権利種別
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特許権(「赤外線センサIC,赤外線センサ及びその製造方法」)
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訴訟類型
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行政訴訟(拒絶)
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結果
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審決取消
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趣旨
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- 特許庁が不服2014-11278号事件について平成28年2月8日にした審決を取り消す。
- 訴訟費用は被告の負担とする。
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取消事由
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ア 取消事由1(引用発明の認定の誤り)
(ア) 取消事由1-1(送信の指令に関する引用発明の認定の誤り)
(イ) 取消事由1-2(保護方法に関する引用発明の認定の誤り)
(なお,取消事由1-1及び1-2は,原告の平成28年4月26日付け準備書面において「取消事由1」として主張されているものであるが,便宜上,上記のとおり別個の取消事由とする。)
イ 取消事由2(一致点の認定の誤り及び相違点の看過)
(ア) 取消事由2-1(本件審決は,引用発明の保護方法データベースに含まれる各アプリケーションの識別子が,本願発明の機密識別子記憶部で記憶されている機密識別子に相当する旨認定したものと理解した場合。なお,原告の平成28年4月26日付け準備書面において「取消事由2」として主張されているものであるが,便宜上「取消事由2-1」とする。)
(イ) 取消事由2-2(本件審決は,引用発明の保護方法データベースに含まれる最高レベルの安全性に対応するアプリケーションの識別子が,本願発明の機密識別子記憶部で記憶されている機密識別子に相当する旨認定したものと理解した場合。なお,原告の平成28年11月28日付け準備書面(第5回)において「取消事由4」として主張されているものであるが,便宜上「取消事由2-2」とする。)
ウ 取消事由3(相違点の認定の誤り及び相違点に係る容易想到性判断の誤り)
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裁判所の判断
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- 原告の主張に係る取消事由のうち,取消事由1は理由がないものの,取消事由2及び3はいずれも理由があるから,本件審決は取り消されるべきである。
- よって,原告の請求は理由があるからこれを認容する。
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キーワード
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新歩性(引用発明の認定,相違点の認定,相違点の判断)/阻害理由
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実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。
相違点Aにつき,引用発明から本願発明の構成に至るためには,引用発明の保護方法データベースにおいて,同データベースで管理するアプリケーションの識別子を機密事項を扱うアプリケーションの識別子に限定する代わりに,同アプリケーションが扱うファイルについては,外部への送信等を絶対的に禁止するなど,入力元と出力先との安全性の比較の余地を排するものとする必要があることとなる。しかし,前記のとおり,引用発明の技術的思想は,入力元と出力先とにそれぞれ設定された安全性を比較することにより,ファイルを保護対象とすべきか否かの判断を相対的かつ柔軟に行うことにあるところ,上記のように引用発明の構成を変更することがその技術的思想に相反することは明らかである。その意味で,そのような構成を採ることには阻害事由がある。
判決文