事件番号等 |
平成28年(行ケ)第10148号 審決取消請求事件 |
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裁判年月日 |
平成29年3月28日 |
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担当裁判所 |
知的財産高等裁判所(第4部) |
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権利種別 |
実用新案権(「気体溶解装置」) |
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訴訟類型 |
行政訴訟:審決(無効・不成立) |
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結果 |
請求棄却 |
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趣旨 |
特許庁が無効2015-400005号事件について平成28年4月20日にした審決を取り消す。 |
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取消事由 |
(1) 本件考案1の容易想到性の判断の誤り (2) 本件考案2ないし8の容易想到性の判断の誤り |
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裁判所の判断 |
本件審決は結論において誤りはなく,原告主張の取消事由は,いずれも理由がない。よって,原告の請求を棄却する。 |
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キーワード |
進歩性(引用発明の認定,相違点の判断) |
実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。
b 原告は,引用考案1における「前記水素ガスと酸素ガスが溶解した圧力水を減圧する絞り機構」を,明らかに機能が異なる引用考案2の減圧部に置換する動機付けはなく,阻害要因がある旨の本件審決の判断につき,水素ガスが過飽和の状態で溶解した水素水を効率的に製造するという周知の技術的課題に直面していた本件出願当時の当業者において,引用例1に,加圧ポンプから供給された水素ガスと酸素ガスが混合された水を加圧溶解タンク内で加圧して水素ガスと酸素ガスの溶解度を高めることができる旨の記載があるにもかかわらず,技術文献としての引用例1を,上記水素水の製造方法を検討する上で役に立たないとして検討の対象から除外することはあり得ない,本件審決の前記判断は,引用例1及び2の明細書を,特許権の範囲を確定する役割を有しているのみで技術文献としての役割は有していないものと捉えて,記載された技術的課題に過度に拘泥するもので,失当であると主張する。
しかし,実用新案法3条2項該当性の判断は,「実用新案登録出願前にその考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者が」「実用新案登録出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された考案」(同条1項3号)等,同条1項各号に「掲げる考案に基いてきわめて容易に考案をすることができた」か否かの判断である。そして,考案とは,自然法則を利用した技術的思想の創作をいうのであるから(同法2条1項),上記判断に当たっては,当該刊行物の記載にどのような技術的思想が表れているかを課題,課題解決手段,効果等の観点から具体的に検討し,その技術的思想に基づいてきわめて容易に考案をすることができたか否かを検討すべきである。本件審決は,引用例1及び2の各記載の技術的思想を踏まえて前記判断をしたものと推認することができ,誤りはない。
判決文