事件番号等 |
平成28年(ネ)第10100号 特許権侵害差止等請求控訴事件 |
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裁判年月日 |
平成29年3月14日 |
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担当裁判所 |
知的財産高等裁判所(第4部) |
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権利種別 |
特許権(「魚釣用電動リール」) |
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訴訟類型 |
民事訴訟 |
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結果 |
控訴棄却 |
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趣旨 |
1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,原判決別紙被告製品目録記載の各魚釣用電動リールを製造し,譲渡し,若しくは輸出し,又は譲渡の申出をしてはならない。 3 被控訴人は,原判決別紙被告製品目録記載の各魚釣用電動リールを廃棄せよ。 4 被控訴人は,控訴人に対し,3850万円及びこれに対する平成27年2月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 6 第2ないし4項につき仮執行宣言 |
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争点 |
(1) 被告製品が本件各発明の以下の構成要件を充足し,本件各発明の技術的範囲に属するか(被告は,その余の構成要件の充足性を争っていない。なお,被告製品1と2は,ハンドルの形状のみが相違し,その余の構造は同一である。また,被告製品1と3,2と4はそれぞれ構造が左右対称であるが,それ以外の構造は同一である。そのため,被告製品1~4について本件各発明の構成要件充足性は同様に論じられるが,以下,被告製品の構成につき「右」又は「左」というときは被告製品1及び2のものをいい,被告製品3及び4についてはこれと逆に解すべきことになる。) (2) 本件特許1~3に無効理由(後記 の進歩性欠如以外のもの)等があるか (ア) 操作部材の配設位置についてのサポート要件及び明確性要件違反 (イ) 操作部材の直径についてのサポート要件及び明確性要件違反 ウ 本件特許3 (ア) 操作部材の配設位置についてのサポート要件及び明確性要件違反 (イ) 凹所についてのサポート要件及び明確性要件違反 (3) 本件特許1~3に進歩性欠如の無効理由があるか (4) 訂正の対抗主張の成否 (5) 控訴人の損害額 |
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裁判所の判断 |
・当裁判所は,被告製品は本件各発明の技術的範囲に属するものの,本件特許1ないし3は本件各訂正によっても特許無効審判により無効にされるべきものと認められるから,控訴人は被控訴人に対し本件特許権1ないし3を行使することはできないものと判断する。 ・よって,控訴人は,被控訴人に対し,本件特許権1ないし3を行使することはできない(特許法104条の3第1項)。 ・以上によれば,控訴人の被控訴人に対する本訴請求をいずれも棄却した原判決は相当であるから,本件控訴を棄却する。 |
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キーワード |
構成要件充足性/特許の有効性(進歩性,訂正の再抗弁の可否)/時機に後れた攻撃防御方法 |
実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。
(1) 訂正の対抗主張について
特許に無効理由が存在する場合であっても,①適法な訂正請求(又は訂正審判請求)がされ(訂正請求及び訂正審判請求が制限されるためにこれをすることができない場合には,訂正請求(又は訂正審判請求)できる時機には,必ずこのような訂正を請求する予定である旨の主張),②上記訂正により無効理由が解消されるとともに,③訂正後の特許請求の範囲に対象製品が属するときは,特許法104条の3第1項により権利行使が制限される場合に当たらない。
(2) 時機に後れた攻撃防御方法との主張について
被控訴人は,控訴人が,当審において,訂正の対抗主張を追加したのに対し,上記主張は,時機に後れた攻撃防御方法の提出として,民訴法157条1項に基づき却下されるべきである旨主張する。
控訴人は,原審において,弁論準備手続が終結されるまでの間,訂正の対抗主張を提出することはなかったが,弁論準備手続終結後に提出された準備書面において初めてこれを主張するに至ったため,原審裁判所により時機に後れたものとして却下された(なお,原審において主張した訂正の内容は,「片手で」との文言の有無の点を除き,当審における訂正の内容と同一である。)。控訴人は,平成28年9月8日に原判決が言い渡されると,同月21日控訴を提起した。他方,同月30日には,本件特許1ないし3に係る各特許無効審判において,審決の予告がされた。そこで,控訴人は,同年11月10日提出に係る控訴理由書において,訂正の対抗主張を記載した。
上記の原審及び当審における審理の経過に照らすと,より早期に訂正の対抗主張を行うことが望ましかったということはできるものの,控訴人が原判決や審決の予告がされたのを受けて,控訴理由書において訂正の対抗主張を詳細に記載し,当審において速やかに上記主張を提出していることに照らすと,控訴人による訂正の対抗主張の提出が,時機に後れたものであるとまでいうことはできない。また,本件における訂正の対抗主張の内容に照らすと,訂正の対抗主張の提出により訴訟の完結を遅延させることになるとも認められない。
よって,控訴人の訂正の対抗主張を時機に後れたものとして却下することはしない。