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知財裁判例速報

平成28年(行ケ)第10099号 審決取消請求事件

  • 2017/03/07
  • 知財裁判例速報

事件番号等

平成28年(行ケ)第10099号 審決取消請求事件

裁判年月日

平成29年2月23日

担当裁判所

知的財産高等裁判所(第2部)

権利種別

特許権(「円周分割パラボラアンテナと,太陽光追尾架台」)

訴訟類型

行政訴訟:審決(拒絶)

結果

請求棄却

趣旨

特許庁が不服2014-15878号事件について平成28年2月17日にした審決を取り消す。

取消事由

1 取消事由1(引用発明及び一致点の認定の誤り)

2 取消事由2(相違点の認定・判断の誤り)

3 取消事由3(相違点の判断の誤り)

裁判所の判断

・取消事由1~3は,いずれも理由がない。また,原告が審決の誤りとして主張するその余の点は,いずれも審決の結論に影響を及ぼすものとは認められず,審決の取消事由となるものではない。

・よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却する。

キーワード

進歩性(引用発明の認定,相違点の認定,相違点の判断)/机上の空論/特許請求の範囲に記載がなく,明細書の発明の詳細な説明にのみ記載された技術的事項


特許出願に係る発明の要旨認定について

実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。

 

  (1) 特許法29条2項は,特許出願前に当業者が同条1項各号に掲げる発明に基づいて容易に発明をすることができたときは,その発明については,同項の規定にかかわらず,特許を受けることができない旨規定しているところ,本件のように,同条2項所定の特許要件,すなわち,特許出願に係る発明の進歩性について審理するに当たっては,この発明を同条1項各号所定の発明と対比する前提として,特許出願に係る発明の要旨が認定されなければならない。そして,同法36条5項が,願書に添付する特許請求の範囲には,請求項に区分して,各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない旨規定していることに照らすと,特許出願に係る発明の要旨認定は,特段の事情のない限り,願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきであり,特許請求の範囲に記載がなく,明細書の発明の詳細な説明にのみ記載された技術的事項を発明の要旨として認定することはできない。

(2) これを本願発明についてみると,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,前記第2の2のとおりであり,原告主張の「本願発明の断面がハート状である」こと及び「本願発明の焦点が円形である」ことについては,いずれも前記記載に含まれておらず,特許請求の範囲に記載されていないし,前記特段の事情も認められない。  そうすると,原告主張の「本願発明の断面がハート状である」こと及び「本願発明の焦点が円形である」ことは,いずれも本願発明の要旨に含まれるものとは認められないから,原告主張の「引用発明は頂部へと高くなっているのに対し,本願発明の断面がハート状である」という点及び「本願発明の焦点が円形であるのに対し,引用発明の焦点は楕円である」という点は,いずれも本願発明と引用発明との相違点には当たらず,これらを相違点としなかった審決の認定に誤りはない。



引用発明における図面の位置づけについて

実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。

 

  引用例1の第1図のような願書に添付された図面は,発明の技術内容を理解しやすくするために,明細書の発明の詳細な説明の補助として使用されるものであり,明細書の発明の詳細な説明以上の詳細な記載が求められるものではないから,図面の記載も,当業者がその特許出願の発明の技術上の意義を理解し,その実施をすることができる程度に記載されていれば足りるものであり,設計図のような正確性が必要とされているものではない。以上の引用例1の第1図の性質に加え,引用例1には,前記(1)エのとおり,「第1図における図上のこれらの,及びその他の寸法は,寸法や規模の制限を課するものではなく,建築上美術上の基準を満足する場所にひどく目立たずに集熱器-集光器を配置する容易性を例示するために示しているにすぎない。」と記載されているから,引用発明が,引用例1の第1図の寸法のものに限定されるものではないことは明らかである。

(6) また,引用例1には,前記(1)エのとおり,「円錐台12aの外側表面にあるリブ14の一端に支柱18が取りつけられ,支柱の他端はアーム20に連結している。」及び「円錐台12a,12b,12cと12dは軽量材料で作る。それらは,鋳造,成型,真空成形,その他の従来の製法によって別々にまたは一体に製造できる。組立体は,小型で,安定で,構造的荷重問題を生じない。」と記載されており,リブ14が,リブ16とともに,円錐台12a,12b,12cと12dを互いに連結し,支柱18が,円錐台12aの外側表面にあるリブ14の一端に取り付けられているから,片持ち支持の構造であっても,所定の材料と製造方法を用いて,リブ14及びリブ16で荷重を支える構造を採用することで,集熱器の重心移動が生じても,個々の円錐台には構造的荷重問題は発生せず,ネジレは生じないものとみることができる。したがって,集熱器の重心移動によるネジレ補正を行う必要はないから,太陽光追尾に伴う集熱器の重心移動によるネジレ補正に大がかりで精密な補正が必要となることを理由として,引用例1に記載された内容が実現不可能な「机上の空論」である旨をいう原告の主張は,理由がない。



 

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