事件番号等 |
平成27年(行ケ)第10230号 審決取消請求事件 |
||
裁判年月日 |
平成29年1月25日 |
||
担当裁判所 |
知的財産高等裁判所(第3部) |
||
権利種別 |
特許権(「噴出ノズル管の製造方法並びにその方法により製造される噴出ノズル管」) |
||
訴訟類型 |
行政訴訟:審決(無効・不成立) |
||
結果 |
審決一部取消 |
||
趣旨 |
特許庁が無効2014-800187号事件について平成27年9月25日にした審決を取り消す。 |
||
取消事由 |
被告が本件各発明の発明者であるとした認定判断の誤り |
||
裁判所の判断 |
・本件各発明のうち,本件発明2については,その発明者が被告であると認めることができるが,本件発明1及び3については,その発明者が被告であると認めることはできない。してみると,本件各発明の発明者をいずれも被告であると認定し,本件各発明に係る特許は,発明者でない者の特許出願に対してされたものとはいえないとした本件審決の判断のうち,本件発明1及び3に係る部分は誤りであり,他方,本件発明2に係る部分は誤りとはいえない。したがって,原告主張の取消事由のうち,本件発明1及び3に係る部分は理由があるが,本件発明2に係る部分は理由がない。 ・以上によれば,原告の請求は,本件審決のうち,本件特許の請求項1及び3に係る部分の取消しを求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却する。 |
||
キーワード |
冒認・共同出願違反 |
実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。
冒認出願(平成23年法律第63号による改正前の特許法123条1項6号)を理由として請求された特許無効審判において,「特許出願がその特許に係る発明の発明者又は発明者から特許を受ける権利を承継した者によりされたこと」についての主張立証責任は,特許権者が負担するものと解するのが相当である。
もっとも,そのような解釈を採ることが,すべての事案において,特許権者が発明の経緯等を個別的,具体的,かつ詳細に主張立証しなければならないことを意味するものではない。むしろ,先に出願したという事実は,出願人が発明者又は発明者から特許を受ける権利を承継した者であるとの事実を推認させる上でそれなりに意味のある事実であることをも考え合わせると,特許権者の行うべき主張立証の内容,程度は,冒認出願を疑わせる具体的な事情の内容及び無効審判請求人の主張立証活動の内容,程度がどのようなものかによって左右されるものというべきである。すなわち,仮に無効審判請求人が冒認を疑わせる具体的な事情を何ら指摘することなく,かつ,その裏付けとなる証拠を提出していないような場合は,特許権者が行う主張立証の程度は比較的簡易なもので足りるのに対し,無効審判請求人が冒認を裏付ける事情を具体的に指摘し,その裏付けとなる証拠を提出するような場合は,特許権者において,これを凌ぐ主張立証をしない限り,主張立証責任が尽くされたと判断されることはないものと考えられる。
以上を踏まえ,本件における取消事由(発明者の認定の誤り)の有無を判断するに当たっては,特許権者である被告において,自らが本件各発明の発明者であることの主張立証責任を負うものであることを前提としつつ,まずは,冒認を主張する原告が,どの程度それを疑わせる事情(すなわち,被告ではなく,原告が本件各発明の発明者であることを示す事情)を具体的に主張し,かつ,これを裏付ける証拠を提出しているかを検討し,次いで,被告が原告の主張立証を凌ぎ,被告が発明者であることを認定し得るだけの主張立証をしているか否かを検討することとする。