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知財裁判例速報

平成28年(ネ)第10046号 特許権侵害差止請求控訴事件

  • 2017/01/23
  • 知財裁判例速報

事件番号等

平成28年(ネ)第10046号 特許権侵害差止請求控訴事件

裁判年月日

平成29年1月20日

担当裁判所

知的財産高等裁判所(特別部(大合議))
(原審・東京地方裁判所平成27年(ワ)第12414号)

権利種別

特許権(「オキサリプラティヌムの医薬的に安定な製剤」)

訴訟類型

民事訴訟

結果

控訴棄却

趣旨

1 原判決を取り消す。

2 被控訴人は,別紙被控訴人製品目録1ないし3の各製剤の生産,譲渡又は譲渡の申出をしてはならない。

3 被控訴人は,別紙被控訴人製品目録1ないし3の各製剤を廃棄せよ。

4 訴訟費用は第1審,第2審とも被控訴人の負担とする。

争点

(1) 一審被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するか否か(構成要件C,D,Gの充足性)(争点1)

(2) 延長登録された本件特許権の効力が一審被告各製品の生産等に及ぶか否か(争点2)

(3) 本件発明に係る特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか否か(乙5又は乙9を主引例とする新規性又は進歩性欠如)(争点3)

(4) 本件各延長登録は延長登録無効審判により無効にされるべきものと認められるか否か(争点4)

裁判所の判断

・当裁判所も,存続期間が延長された本件特許権の効力は,一審被告による一審被告各製品の生産等には及ばず,本件請求は理由がないものと判断する。

・一審原告の請求をいずれも棄却した原判決は相当であり,一審原告の本件控訴は理由がない。

キーワード

存続期間が延長された特許権の効力/均等/大合議


特許法68条の2に基づく延長された特許権の効力の及ぶ範囲について

実務上役立つと思われる点を、以下の通り判決文より抜粋する。

 

  対象製品が政令処分で定められた「成分,分量,用法,用量,効能及び効果」によって特定された「物」と医薬品として実質同一なものに含まれる類型を挙げれば,次のとおりである。
 すなわち,①医薬品の有効成分のみを特徴とする特許発明に関する延長登録された特許発明において,有効成分ではない「成分」に関して,対象製品が,政令処分申請時における周知・慣用技術に基づき,一部において異なる成分を付加,転換等しているような場合,②公知の有効成分に係る医薬品の安定性ないし剤型等に関する特許発明において,対象製品が政令処分申請時における周知・慣用技術に基づき,一部において異なる成分を付加,転換等しているような場合で,特許発明の内容に照らして,両者の間で,その技術的特徴及び作用効果の同一性があると認められるとき,③政令処分で特定された「分量」ないし「用法,用量」に関し,数量的に意味のない程度の差異しかない場合,④政令処分で特定された「分量」は異なるけれども,「用法,用量」も併せてみれば,同一であると認められる場合(本件処分1と2,本件処分5ないし7がこれに該当する。)は,これらの差異は上記にいう僅かな差異又は全体的にみて形式的な差異に当たり,対象製品は,医薬品として政令処分の対象となった物と実質同一なものに含まれるというべきである(なお,上記①,③及び④は,両者の間で,特許発明の技術的特徴及び作用効果の同一性が事実上推認される類型である。)
…しかし,特許発明の技術的範囲における均等は,特許発明の技術的範囲の外延を画するものであり,法68条の2における,具体的な政令処分を前提として延長登録が認められた特許権の効力範囲における前記実質同一とは,その適用される状況が異なるものであるため,その第1要件ないし第3要件はこれをそのまま適用すると,法68条の2の延長登録された特許権の効力の範囲が広がり過ぎ,相当ではない。
 …以上によれば,法68条の2の実質同一の範囲を定める場合には,前記の五つの要件を適用ないし類推適用することはできない。


 

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